【完】STRAY CAT



「色々あって、俺が藍華に引き入れた。

中学に上がってもアイツは、ほぼ俺としか話さねえままで。オマケに藍華のメンバーだってわかってるヤツらに絡まれてから、喧嘩っ早くなってな」



藍華の中でもよく揉めてたよ、と。

あすみくんは、どこか懐かしむように目を細めた。



「俺はアイツの中学での生活を知らねえけど、アイツも一応学校では大人しくしてたんだろ?

……そのせいか、余計に藍華で喧嘩しててな。まあ今思えば、随分寂しかったんだろ」



「……そう、なんだ」



仲良くなれるまで、わたしも時間が掛かった。

恭がいきなり怪我をしてくることもあったのは、そのせいなのかと今になって理解する。



「そのあとから藍華に入ってきた暖とは、いい意味で合わなくて。

アイツが、かなり恭に踏み込んだこともあって、恭もようやく周りと打ち解けられるようになった」



ちなみに、あすみくんと同じように、よくちょっかいを掛けてきていた先代の春野先生とはその前から仲が良かったらしい。

……だから春野先生も、恭のことはあんなに気に掛けているのか。




「……それでも時々、一線引いてた恭が。

途中から、性格もかなり丸くなった」



「……みんなと仲良くなったからじゃないの?」



「俺も当時はそう思ってた。

……でも、あの時ようやく気づいたよ」



恭含め、藍華の新しい幹部が決まって。

元々恭以外は同じ中学の出身らしく、それもあって仲の良かった全員が同じ高校を志望。



その合格発表が出た数日後。

……唐突に、恭が、荒れて藍華の倉庫に帰ってきた。



「しばらく穏やかだったから、全員が驚いたよ。

……意地張って恭も話さねえから、仲の良い暖だけが色々口きいて、"別れた"って」



わたしと恭が付き合っていることはみんな知っていた。

付き合っているときに直接恭から聞いたけれど、恭はわたしのことを、たまに藍華内で話していたらしい。



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