【完】STRAY CAT



青ざめていく男たち。

それでも「んなのはったりだろ!」と声を上げるのはせめてもの足掻きらしい。……困った、な。



「はったりだと思うなら、」



試す?と。できるだけ余裕げに見えるようにスマホを取り出す。どこからか、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

……ああ、ハセが出てこないと思ったら、警察に連絡してくれてたのか。



「や、やってみろよ……」



「その必要はねえよ」



電話をかけるフリなら、できる。

でも実際に電話はできない。……だってわたしが言った「恭」の連絡先は、スマホに入ってない。



だからせめて警察が来るまでの時間稼ぎでもしようと思っていたら、背後から聞こえてきた声。

ばっと振り返れば、静かに歩み寄ってくるひとりの男。




「恭に連絡する必要はない」



綺麗な顔をした、黒髪の男。

わたしは、その人の名前を、知ってる。



「あすみ……」



恭が、そう呼んでた男の人。

写真でしか見たことがないけど、そう、彼は。



「あすみ!? こいつ、御倉(みくら)……!

っ、おい、どうすんだよ!藍華の総長相手にして勝てるわけねえだろ!?」



「っ、んなこと言ったって……!

ったく仕方ねえ、今回は逃げんぞ!」



負け犬よろしく、「覚えてろよ!」と吐き捨てて逃げるように去っていく5人組。

藍華総長こと御倉あすみは、それを追うこともせず、ただ面倒そうにため息をついただけだった。



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