【完】STRAY CAT
「そーんなに彼女が良いのかよ~。
お前モテるんだから、いくらでも女いるでしょうに」
「………」
暖がゆるっと俺の手から酒を取り上げつつ、どうにもならないようなアドバイスをしてくる。
……そんなの、俺だって、わかってんだよ。
俺の前でいつも笑顔でいてくれて。
眩しいくらいに「好き」だと伝え続けてくれた鞠と、無意識にほかの女を較べてしまう。
鞠なら、鞠だったら、って。
戻れもしねーのに、そんなことばかり思う。
「……どう考えたって、俺の方が好きだろ」
3年間、ずっと一緒だった。
中学3年間の思い出は、鞠だと言ってもいいくらい。
「僕は、鞠ちゃんのことよく知らないけどー」
チカが、アルコールの入った小瓶を指でつつく。
中の液体が、その衝撃を受けてゆらゆらと揺らめいた。
「上手くいってくれたらいいのにって、思うよ」
「……ま、ベタ惚れなのは見てればわかるけどね」
チカとなずなが、くすくす笑い合ってる。
暖も「しゃあねえな~」なんて言ってるし、あすみはただ、俺らの様子を見守ってるだけだけど。
「お前のために、
俺らが一肌脱いでやろうじゃねえの」
人に頼ることも、上手く出来ずに生きてきた。今ここに俺の居場所があるのだって、鞠のおかげだ。
……だからこそ。振り向かせたいと、強く思う。