【完】STRAY CAT
「っ、ふ、」
普通のキスとは違って、もっと深いキス。
それを鞠が憶えてからまだ日が浅いこともあって、舌の動かし方が拙い。……、くそ、煽られる。
別に言うことでもねーだろうけど。
今日も、家には、誰もいない。
「きょう……」
壁やヘッドボードで打たないように支えた頭を、枕に乗せる。
どこか期待した目で見つめられると、止まらなくなる。……こうなるのは、"はじめて"の日以来。
というのも、基本一緒にいるのは学校か鞠の家。
鞠の家では日中に愛さんがいて、夕方からは蒔がいる。ふたりきりになれる時間が、かなり少ない。
もう一度家に遊びに行きたいと言われたから、特に拒む理由もないからと呼んで部屋に入れたけど。
誰もいない家に、彼女とふたりきり。
俺の頭の中の思考がどうなってるかなんて、たぶん言われるまでもなく誰もがわかる。
……だから、すこし離れて座ってたっつーのに。
無防備な姿を見せられて、抱きつかれて。
こんな風に健気にキスに応えられたら、止まれない。
「……俺のこと煽ってんの?」
手を自分の手で押さえるようにして縫い止める。
身動きできない鞠の身体が、キスの最中で時折小さく跳ねる。もう全部、俺を誘ってるようにしか見えない。
手を伸ばして、照明のリモコンを操作する。
部屋を暗くして、ワンピースから覗く足に触れる。
「っ…、」
指でなぞるだけの動きにも、顔を真っ赤にする鞠。
恥ずかしそうな顔をして、瞳に薄らと涙を浮かべて、抑えきれない甘い声を漏らして。