【完】STRAY CAT



どんな理由でも、一緒にいようとしてくれた。

そんな紘夢が別れを切り出すってことは、相当な覚悟を決めてくれたのだと思う。



「……紘夢」



「いいって。

無理に急かして彼女にしたのは俺だったし」



むしろごめんな、と。

謝られて、ふるふると首を横に振る。



温度差があることによって傷つけるのはわかっていたのに、利用しようとしたわたしが悪い。

最初から最後まで最低だったというのに、それでも好きだと言ってくれた紘夢は本当に優しかった。



「……まあでも、強いて言うなら。

今日帰るまでは、俺の彼女ってことで」



最後のわがまま、と。

言った紘夢は、わたしの答えを聞くつもりは無いらしい。……聞くまでもなく、わかっているらしい。




「短い間だったけど。

俺の無茶ぶりに付き合ってくれてさんきゅ」



「……ごめんね」



「ま、どうしても婚約したいって言うなら。

……いつでも俺はウェルカムだけど」



ふっと笑って、紘夢は「もどるか」とわたしに手を差し伸べる。

言いたいことは色々あったけれどどれも間違っているような気がして、何も言わずにその手を握った。



「ありがとう」



傷つきたくなくて縋ったのに、結局は紘夢を傷つけることになってしまった。

決めたはずなのに簡単に揺らいで、そのくせ紘夢の手を離すこともできなくて。ずるくてごめんなさい。



みんなの姿が見える、直前。

紘夢がわたしの手を離して、その瞬間に終わりを悟った。



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