【完】STRAY CAT







「……それで、どうなさるおつもりですか」



夕方になってプールから上がると、その後は紘夢の居心地も悪そうだからと、どこにも寄らずに帰宅した。

紘夢が同じマンションだから大丈夫と告げて、藍華のみんなとはその場でお別れ。



はしゃいでいた蒔も、帰る頃には疲れて眠そうで。

帰宅後すぐに作り置きしてあったものでご飯を済ませ、お風呂に入れたあと、すぐに寝てしまった。



そうして、ひとりの時間ができた20時前。

紘夢との婚約を破棄したいのだと父親に連絡を入れた数十分後に、黒田さんがため息混じりで婚約指輪を回収しに来た。



「どうって?」



わたしはすこし落ち着いてから連絡するつもりだったのだけれど。

マンションまで一緒に帰ってきた紘夢に、「変に話が進む前に婚約解消しよう」と言われ、帰宅したらすぐに連絡することを約束した。



さすがに蒔の前では話せない話題だから、

色々済ませた後になってしまったけれど。




「鞠お嬢様は、蒔お嬢様を守るために。

自らを犠牲にしてまで婚約するおつもりだったのでは?」



「……それが何か」



「婚約解消された今。

……それを、どうなさるおつもりなのかと」



父親からは「わかった」の二つ返事だった。

まるでわたしが望んで婚約をしていないことを、最初からわかっているみたいに。……そもそも、わたしが婚約しようがしまいが、既に橘花コンツェルンは権力を持ちすぎていて、どうでもいいのかもしれない。



「……すこし疲れたから、休みたいの」



「………」



「どうせ、卒業するまで結婚できないんだし」



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