【完】STRAY CAT
◇
「……それで、どうなさるおつもりですか」
夕方になってプールから上がると、その後は紘夢の居心地も悪そうだからと、どこにも寄らずに帰宅した。
紘夢が同じマンションだから大丈夫と告げて、藍華のみんなとはその場でお別れ。
はしゃいでいた蒔も、帰る頃には疲れて眠そうで。
帰宅後すぐに作り置きしてあったものでご飯を済ませ、お風呂に入れたあと、すぐに寝てしまった。
そうして、ひとりの時間ができた20時前。
紘夢との婚約を破棄したいのだと父親に連絡を入れた数十分後に、黒田さんがため息混じりで婚約指輪を回収しに来た。
「どうって?」
わたしはすこし落ち着いてから連絡するつもりだったのだけれど。
マンションまで一緒に帰ってきた紘夢に、「変に話が進む前に婚約解消しよう」と言われ、帰宅したらすぐに連絡することを約束した。
さすがに蒔の前では話せない話題だから、
色々済ませた後になってしまったけれど。
「鞠お嬢様は、蒔お嬢様を守るために。
自らを犠牲にしてまで婚約するおつもりだったのでは?」
「……それが何か」
「婚約解消された今。
……それを、どうなさるおつもりなのかと」
父親からは「わかった」の二つ返事だった。
まるでわたしが望んで婚約をしていないことを、最初からわかっているみたいに。……そもそも、わたしが婚約しようがしまいが、既に橘花コンツェルンは権力を持ちすぎていて、どうでもいいのかもしれない。
「……すこし疲れたから、休みたいの」
「………」
「どうせ、卒業するまで結婚できないんだし」