【完】STRAY CAT
「じゃあ、予定確認したらそっちで送るから」
『ん。……今はひとりか?』
「うん。蒔も帰ってきたあと疲れて寝ちゃった」
『すげーはしゃいでたもんな』
音のない部屋に、自分の声と、電話越しの恭の声だけ。
まるで世界にふたりきりになったみたいで。……なんだかすこし、さみしいような気分になった。
「ねえ……恭」
弱っていたわけじゃない。
ただ甘えたかったわけでもない。……なのに。
「……会いたい」
漏れ出たそれは、紛れもなくわたしの本音で。
ハッとして「ごめん、忘れて」と謝るけれど、当たり前のように彼の元にその声は届いていて。
『……ンなこと軽々しく言うんじゃねーよ』
「、ごめん」
『俺も会いたいに決まってんだろーが。
……何かあったんなら、すぐ行ってやるけど』
「っ、ううん、何もない」
慌てて否定すれば、『嘘ついてねーよな?』と確認される。
本当に何も無いことを丁寧に伝えれば、彼は『ならいーけど』と納得してくれた。