【完】STRAY CAT
蒔がいい子にしてくれているから。
親と顔を合わせることなくいつもわたしが送り届けても、蒔の友達のご家族は優しくしてくれる。
今回も、例に洩れず笑顔で迎えてくれて。
「これ、よかったら」と手土産を渡すと、「いつもありがとう」と優しく笑ってくれた。
「蒔のこと、よろしくお願いします。
……明日の夕方には迎えにくるので」
「うん、
それまで蒔ちゃんは家でしっかり面倒見るね」
「おねーちゃん、また明日!」
ニコニコ手を振られて、それに振り返す。
わたしも待ち合わせがあるからと、蒔を送り届けたあと、足早に駅前へと向かった。
……時間には、全然間に合うんだけど。
何となく気持ちがそわそわして、自然と早足になる。
「恭!」
その速さのまま、駅前にたどり着くと。
相変わらず綺麗な髪色は目立っていて、特に探すこともなく、彼の元へ駆け寄る。
そうすればスマホから上げられた視線は、わたしを捉えて。
そのまま、視線が優しく緩められるのを感じた。
「早かったな。もっと掛かるかと思った」
「なんかそわそわしちゃって。
……恭こそ、まだ早いのに待っててくれたの?」
「俺が取り付けた約束に遅れらんねーだろ」
恭に、じーっと見つめられる。
なんだかそれがひさしぶりで、思わず「変かな?」と尋ねてしまうわたし。