【完】STRAY CAT
「んな事ねーよ。……かわいい」
「っ、」
髪を崩さない程度に、ぽんぽんと頭を撫でられる。
あんまり素直に褒められたら、照れてしまう。恭も白いシャツが夏っぽくて似合うし、黒いパンツが彼の脚の長さを引き立ててる。
かっこいいよ、なんて。
思ってても、言えるはずないけど。
「無事に蒔のこと送れたか?」
「うん、いま送ってきた」
どちらともなく歩き出して、プールの方へ向かう。
今住んでいる地域が割と栄えているおかげで、大抵の事はこの街で住む。プールも、そのひとつだ。
「……なら今日は、時間気にしなくていいな」
「っ、恭、」
触れそうで触れていなかった手。
それをするりと握られたかと思うと、瞬く間に恋人繋ぎにされて、心臓がドキドキ音を立てる。
「こうとしとかねーと、逃げるだろ?」
「に、逃げない」
「あと、お前へのナンパ対策?」
こんなにスマートにエスコートされたら、嫌だとも言えない。……嫌なんて、思ってないけれど。
恥ずかしくて、顔が熱くて、繋いだ手にこのドキドキが伝わってしまわないか心配になる。