【完】STRAY CAT
「ナンパなんて、されないわよ」
「どーだか。
……なんかいつにも増してかわいいし」
「っ、むしろされるのは恭の方でしょ?」
「別に俺は男だから力ずくでなんかされる事もねーし。
……そもそも、別に俺がナンパされようがお前はなんとも思わねーだろうし」
心臓が、引き攣る。
なんとも思わないわけない。むしろ嫌だと思ってしまったから、あの時、咄嗟に女の子ふたりの前に出てしまったというのに。
「……なんとも思わなかったように見える?」
まだ、気づかないでほしい。
でも、気づいてほしい気持ちもあって。
「……お前のその、
たまに俺のこと期待させんのなんなんだよ」
「……べつにー」
「はあ? なんでお前が拗ねてんだ」
「拗ねてないもん」
そんなやり取りをしているうちにプールにたどり着く。
家から考えると結構歩いたから、そこそこに汗もかいていて。手早く入場を済ませると、お互い更衣室に入った。
「……大丈夫かな」
今のところ、たまに照れたりするけど、不審な態度はとってないように思う。
恭が話したなんて考えにくいけど、あすみくんから『今日は尾行いねえから気にせず楽しめよ』とメッセージが来ていた。