【完】STRAY CAT



板挟みにされながら、色々アドバイスしてくれていたのは、こういうことだったんだろう。

どちらかが素直になっていれば、とっくにわかっていたこと。



本当に、無駄に遠回りしてしまったわけだ。



「別れた理由は、それであってんのか?」



「うん。……蒔が、わたしの、いちばんだから。

そのために何とかしなきゃって、ずっと思ってて」



「……それさ、お前頑張ってるけど。

蒔が父親に会うデメリットあんま無くね?」



パフェの底の、ケーキ部分をスプーンですくう。

水分を吸ってしまって、ふにゃふにゃになってる。



口に入れて何回か咀嚼すると、やたら甘ったるい。

……けれどその甘ったるささえ、今は愛おしく思えた。




「ま、難しいことは後回しだな。

……とりあえず、もう俺から離れんなよ」



「……うん」



「愛してる」



さらっと言われて、頬が色づく。

同じ言葉を返したいのに返せなくて視線を泳がせるわたしを、恭は愛おしそうに見つめてくれて。



「……やっぱりお前がいちばんかわいい」



「っ、」



本当、甘すぎ、だと思う。



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