【完】STRAY CAT
第14章 ロスト・アイス
◆ Side Kyo
嬉しそうに笑う顔も、寂しげな瞳も。
名残惜しそうな表情のひとつだって、誰にも渡せそうにない。……渡せるわけが無い。
「おはよぉ、恭ちゃん」
「はよ。……まあもう夜だけどな」
離れがたそうな鞠をマンションまで見送ったのがついさっき。
その足で藍華のたまり場に顔を出せば、予想通り幹部室には全員が揃っていて。
「で、デートどうだったんだよ~」
「……なんで知ってんだよ」
それはもう、ニヤニヤが止まらない暖とチカ。
口出ししてこないけど絶対に興味はあるなずなと、いつも通り特に何も思っていないだろうあすみ。
「そりゃあ、ねえ。
昨日からずーっと機嫌よかったじゃねえの」
「………」
「そんな機嫌良い状態で"明日来ねーかも"って言われたら、そりゃあお姫様との用事でしょうに」
別に顔にも態度にも機嫌にも出した記憶はねーけど。
暖がそう言うならそうなんだろう。……ま、言われたところで俺が鞠をどう思ってるのかなんて、分かりきってるから構わねーけど。
「楽しかったー? 恭ちゃん」
「まーな」
「そっかそっかぁ。よかったねぇみんな」