【完】STRAY CAT
「や、やめてよ冗談言うの……」
弱々しい抵抗の声が震える。
背中を向けられて、顔が見えない。でもいまわたしは、情けないくらいに真っ赤な顔をしてる。だから見てほしくないっていうのに、恭はあっさり振り返った。
「……お前でも静かに話せるんだな」
「は、あ……!?」
「うるせえ……」
誰のせいだと……!
っていうか、ほんと、顔あつい。
わたしがここに来るようになったのは、入学してすぐに学級委員になったから。
先生から「頼むよ」と懇願されて、問題児の恭を諭すつもりで一緒にいるのに。
気づいたら、影響されたのはわたしの方だった。
まだ1年生だから先輩たちには「生意気」だって言われて、教師たちからは「どうしようもない問題児」だって言われてるけど。
ほんとは、すごくすごく優しい人。
その優しさに触れてから、恭のことが愛しいの。
「恭……好き」
「だからうるせえって」
「うるさくてごめんね」
はじめはただ仕方なく先生に頼まれて一緒にいただけなのに。
今はもう、昼だけじゃ物足りないくらい一緒に過ごしたくなってる。
「……何してんだよ」