【完】STRAY CAT
「……大丈夫ですか、お嬢様」
「うん、平気。……ずっと、いてくれたの?」
「はい。おはようございます」
「おはよう。……ありがとう、忙しいのに」
鞠が立ち上がろうとするから、それを支えるように俺も立ち上がる。
たった今泣きそうだったというのに、強く在ろうとするのは性格なのか、それともお嬢様という肩書き故か。
「何か食べたいものはございますか?」
「いいわよそこまで。料理くらいできるし。
……社長のところに帰らなくていいの?」
もう平気だと主張する鞠と、そんなわけないと言いたげな顔の黒田さん。
ちなみに俺も、鞠は無理してると思う。
「お嬢様の面倒を見ることを命令されてますので。
……それに、警察の方もお話がしたいと。昨日はお嬢様を救出した際、意識を失っておられましたから」
「、」
「さすがにそれは無理だろ。
……思い出せって言ってるようなもんじゃねーか」
鞠の表情が、急に固くなる。
言われなくてもわかっていたからすぐに鞠を庇うけれど、黒田さんもそれを望んでいるわけじゃないことはわかる。
「……昼からで、構わない?」
「鞠、」