【完】STRAY CAT
気にはなったけど、誰も教えてくれなかった。
ママさんも警察も、"そういうこと"にしておこうと思ったんだろう。わたしや蒔に知らせないために。
「こんなにも私は、彼女を愛していたのに」
ストレスの要因は、過労死の原因は、きっと別だ。
この人のせいでは無いのだろうか、と思った瞬間。
何をされるか分からない恐怖と、この人のせいで、という微かな殺意。
相まった感情が膨れ上がって、わたしを支配する。
「それで……わたしを、どうするんですか」
「君はやっぱり、彼女によく似てる。……だから。
今度こそ、"彼女"を私のものにするんだ」
「っ、た、」
がっつり掴まれた手首。あまりの力で痛みに顔をゆがめるわたしを、お構い無しに組み敷く。
乗りかかられて、手も足も動かせない。
「っ、……や、」
怖い。気持ち悪い。
恐怖と嫌悪感で、顔をそむける。わたしの両手を押さえる手が片手になったからその隙を狙おうとしたけれど、男の力に敵うわけがなかった。
いやだ。……いやだ。いやだ。
「っ、やだ、はなして、っ」
「うるさい。君はもう私のものだ」
泣きたくもないのに、涙が出てくる。
彼のためだけに悩んで選んだはずの洋服を、たくし上げられる。