【完】STRAY CAT
「蒔、あとで連絡するわね。
……黒田さん、蒔のことよろしくお願いします」
「畏まりました。
何かありましたら、またご連絡を」
怖いもの知らずなのか、本当に楽しみなだけなのか。
蒔はわたしと恭が車を降りてもニコニコしていて。そのまま手を振って見送ると、車はあっという間に見えなくなった。
「……ほんとにわがまま言わねーな」
「……うん。助かってはいるんだけどね」
恭と顔を見合わせてから、家の中へと入る。
「使ってないから」という理由で、まさかの、恭の部屋の隣の一室を、わたしに貸してくれるらしい。
机とベッドがあって。
1週間ほどなら、待遇が良すぎるくらいだ。
「どうせ使わねーからお前のもの好きに置いといていいぞ。
……あ、あと。ベッドはさすがに古いから、新しくマットレスと布団買い換えるまで使うの禁止な」
「……じゃあわたしどこで寝るの?」
「俺と一緒に寝たらいいんじゃねーの?」
……ドキドキしてるのは、わたしだけなんだろうか。
ひさしぶりだというのに、一緒に寝るなんて。いや、決してそれが嫌というわけじゃなくて、ただ、なんとなく恥ずかしいだけなんだけど。
「……ま、嫌なら俺ソファで寝るけど」
「っ、一緒に寝ます」
さすがに家主をソファで寝させるわけにはいかない。
そう思ってとっさに声を上げれば、彼は「じゃあ決まりな」とイタズラに笑ってみせる。