【完】STRAY CAT
あまりにも鞠が可愛いせいで、その話は更衣室を出てからも止まらず。
昼休みになった教室であっという間に「彼女めちゃくちゃかわいい」という話題が広がったというのに。
「恭くん、ほんとに彼女いたんだね」
「、」
話し掛けられて、一瞬息を詰める。
"リカ"は、「冗談かと思ってた」なんて笑ってるけど、どこまでがコイツの本気なのかわからない。
「そういえば、メッセージ見てくれた?
既読ついたのに返事こなかったから気になってて」
「あー、見た。彼女といたから返すの忘れてたわ」
一応、建前だけのそれっぽいことを言っておく。
別にコイツに嫌われようが縁を切られようが構わないけど、まだあと半年ほどのクラスメイトだ。しかも何考えてるかわかんねーから、迂闊に冷たくできない。
「そっかそっか。あたしも写真見たいな?」
「ナイショ」
やんわり断って、「チカー」と用事があるかのように話し掛けに行く。
そうすれば"リカ"は、さすがにそれ以上寄ってこなかったけど。
「お前よ~。がっつり好かれてるじゃねえの」
「……困ってんだよ」
その後も隙があれば話し掛けてくるあいつ。
見兼ねた暖が、放課後には疲れ切っている俺を見て苦笑する。
「でも変だよねえ」