【完】STRAY CAT
……変?
「あのコ、別に今まで話し掛けて来なかったじゃねえの。
恭が婚約したって発表してから話し掛けてきてるだろ~」
「……たまたま同じタイミングなだけじゃねーの?」
「そんな甘いこと言ってて良いのかよ~。
世の中には、"人のモノを横取りしたい"人間もいたりするんだからな」
気をつけろよ?と、珍しく真剣に相談に乗ってくる暖。
普段はふざけているのに、その瞳は本気で俺らのことを心配しているようで。
「そのタイプの人間は、手段は選ばねえから。
……鞠ちゃんのこと、しっかり守ってやれよ?」
何かあってからじゃ遅ぇよ、と念を押される。
わかってる。……前に一度守ってやれなかったんだから、二度目なんてない。絶対に守るって決めてる。
「……あすみ。未だに護衛はつけてんだよな?」
「ああ。俺らと関わりがある以上は。
……まあ、引っ越して父親と住み始めてから移動が車になった上に、ボディガードもついてることを考えれば容易に手は出せないだろ」
橘花の姉妹を守る厳重な警備。
今までは鞠の要望でつけてこなかったボディガードも、前回の鞠の誘拐の件を踏まえて、付けることにしたらしい。
俺らに気づかないように動いてくれているボディガード。
鞠がうちに遊びに来る時も、しっかり見張っててくれているようだ。そこはプロとあって、俺らもどうやって見張られているのかは知らないけど。
「……まあ。
あいつも、何かあったら言うだろうしな」
確かにそうか。
鞠も前よりは危機感持ってるし。
大丈夫か、と。
……俺がそれに安心したのが、悪かったと思う。