【完】STRAY CAT
「恭ちゃん、鞠ちゃん来るの何時ー?
お腹すいたからハンバーガー食べに行こうよー」
つんつんと、シャツを引っ張られる。
数日後。金曜日。金曜日の放課後は高確率で鞠がウチに泊まりにくる。それを知っているチカは、一応配慮してくれたらしい。……が。
「あー、なんか今日は来ねーらしい。
明日の朝にするって昨日連絡きてた」
「……めずらしいね?」
「たまには蒔と過ごしたいんだろ。
最近ずっとこっち泊まりに来てたしな」
俺らだって、何もずっと一緒なわけじゃない。
鞠と過ごしたい気持ちは山々だが、別れていた時期に離れていたこともあって、中学の時のように毎日顔を合わせなくとも焦ったりはしない。
……まあ、たまに寂しそうに夜中に「電話していい?」って聞いてくるけど。
それはそれで可愛い。顔が見えないからか、いつもよりも鞠がちょっと素直になる。思わず、話していて口角が上がってしまうほどに。
「じゃあ行こー!みんなも行くでしょ!」
「……チカって素直だよね。
俺はしれっと鞠ちゃんとの週末お泊まりの報告をしてきた恭に対して嫌だなって思ってたよ」
「同感だわ~。
なーにひとり彼女と楽しそうにしてんだよ」
んで、金曜日の放課後は1週間の疲れがたまるのか知らないが、なずなと暖からの当たりがひどい。
チカは「駅前でいいよねー」なんて言ってるし、たぶんメシのことに夢中で俺らの話を聞いてない。
「なんか恭見てたら羨ましくなるよね。
恭、面白くないから1回振られてみてくれない?」
「既に1回振られた後なんだよ」
ファストフード店に向かいながら、理不尽なことを言われる俺。
……でも本当に、鞠が隣に戻ってきてくれてよかった。