【完】STRAY CAT
「なんで振られたんだろうね?
別に恭、顔も性格も悪くないと思うんだけど」
「鞠ちゃんはもっと大人の男派だったのかもねえ」
「……俺が今復縁してなかったらブチギレてるぞ」
最近、何かとこのふたりが鞠のことでイジってくるようになった。復縁する前や、鞠の身に色々あった時は、あんなに頼れると思ったのにな。
……逆に言えば、イジってもいいと思えるくらいに俺らの仲が修復された証拠ではあるけど。
「……あれ?」
「なんだよちーかちゃん」
ふと、先頭を張り切って歩いていたチカが足を止める。
その視線は、駅前の繁華街のとある一点を見つめていた。
「……あれ、鞠ちゃんだよね?」
「え、ほんとだ。何してんのあの子」
言われた方を見れば、確かにピンクの髪を風に遊ばせている鞠の姿。
ただ、俺らが"嫌な予感がする"と感じた理由はそこじゃない。
「ちょ、あの子"リカ"といるじゃねえの」
「ほんとに何してんの?」
俺に好意があるかもしれない人間と、一緒にいたということだ。
俺のスマホを見て「これ誰?」と言っていたくらいだから、おそらく鞠とリカは顔見知りじゃない。
なのになんで、と。
考えるよりも早く、足が動いていた。