【完】STRAY CAT



何を言われているのか全くわからなかった。

いや、言われてることはわかんだけど。その意味が全然頭に入ってこなくて、「はぁ?」と呆れたような声が漏れる。



「俺がそれで"はいはい"って言うと思ってんのかよ」



「だって、ずっとアプローチしてたでしょ?」



「誰に何言われようが、たとえ告白されようが。

俺は鞠としか付き合わねーよ。どんだけ苦労して手に入れたと思ってんだ」



「恭……」



鞠を好きになったあの時から、気持ちは何年たっても褪せてない。

それどころか、膨らむばかりで困っているというのに。他の誰かで良いなんて、嘘でも絶対に思わない。



「つまんないなぁ。

絶対わたしの方が幸せに出来ると思うのに」




ぴくりと。

鞠の肩が揺れたのを、見えなかったけれど気配で感じた。その瞬間に、今までの複雑な感情を置いてけぼりにして、ふつふつと怒りが湧いてくる。



「……それ以上余計なこと言うなよ。

鞠のこと泣かせたらマジで許さねーからな」



「えー?わたしの方が、学校もクラスも一緒だからそばにいられる時間も長いし、思い出もたくさん共有できるのに。……とか?」



「お前、」



「わかったからもうやめとけ」



プツンと来てしまったことに、気づいたのだろう。

あすみがめずらしく仲裁に入って、ため息をつく。それから、何を言うのかと思えば。



「リカ。それ以上言ったらさすがに恭がキレる」



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