【完】STRAY CAT
「ねえ、恭」
「どした?」
「だいすき」
「……俺は愛してる」
どんな言葉も、今は誰にも邪魔されない。
伝えた気持ちは鞠にだけ届くし、もう二度と仲違いしたくないことを思えば、気恥ずかしいなんてことも言ってられない。
「わたしも、恭のこと愛してるよ」
ねむそうな、甘くて優しい声で。
そう返ってくることがこれ以上ないくらい幸せなことを、俺はもう痛い程に知ってる。額に触れるだけのキスをすれば、その瞼はとろんとしつつも開く。
「……くちびるは?」
「眠いんじゃねーの?」
口を塞いで、額と同じように触れるだけ。
けれどそれが物足りなかったらしい。俺の腰あたりに投げ出していた手を首に回してきたかと思うと、逃さないようにお互いの距離を詰める。
「っ…ん」
もう何度もしているのに、鞠のキスへの応え方がまだ頼りない。
それでも強請るように口を開けるものだから、落ち着いていたはずの感情が膨れ上がって堪らなくなる。
「寝かせてやれねーけど、許せよ?」
結局どちらも引かない誘惑に負けたのは俺の方。
組み敷けば、さっきまで眠そうだった瞳も艶やかに濡れる。……今日も今日とて、夜は長い。