【完】STRAY CAT



顔はあついし、くちびるの感触に思考をすべて奪われてる。

だけど拗ねたようにつぶやく恭が愛しくて、ぎゅうっと抱きついた。



「わたしのことすき?」



「……さーな」



「えー……そこは好きって言ってよ……」



むうっと頬をふくらませるわたしの顔に、恭の影が重なる。

縮まる距離にきゅっと心臓が小さくなるのを感じながら、彼のシャツを握って、目を閉じた。



「もっと……いっぱい」



ねだれば恭が目を細める。

結局好きとは言ってくれなかったけど、恭の気持ちがいっぱい感じられるような、優しいキスだった。




それは日増しに甘くなって。

恭の気持ちがかたむいてることには、とっくに気づいていたけど。はっきりくちに出して言ったのは、年が明けた頃だった。



「ねえ……付き合ってくれないの?」



「………」



寒くなってきたから、身を寄せ合うのは晴れの日だろうと雨の日だろうと旧音楽室になった。

いまだに恭は授業に出ないし、毎日恭のもとに通い続けるわたしを、みんなは「脅されたりしてない?」って心配してるけど。



わたしは自らの意思で恭に会いに来てる。

だけどそれは秘密。



でも欲が出たんだと思う。

恭の彼女になりたいって欲が出て、平日の昼休みだけじゃなくて休みの日も会いたいって欲が出た。だって冬休み、会えなくてさみしかったんだもの。



「……付き合う気はねーよ」



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