【完】STRAY CAT
「恭、いまなんか失礼なこと考えたでしょ?」
「なんで結婚できたんだろーなと思って」
「もしかしなくてもわたしの話よね?それ」
その不服そうな顔を見て、とあることを思う。
……突拍子のねーことを言い出す以外は、鞠とめちゃくちゃ似てるんじゃねーか?
どこか気まぐれでわがままで、たまに掴めなくて。
でも根底にはどことない子どもっぽさも残る。
「あ、あのっ。
……よければ朝食、ご一緒にどうですか?」
わたしが作るので!と。
突如言い出す鞠に、母さんは「いただこうかしら」とにっこり微笑む。それを聞いてすぐにキッチンに引っ込んでいった鞠。
「……あんま揶揄ってやんなよ」
「揶揄ってなんかないわよ。
ただ、恭のお嫁さんと仲良くしたいだけじゃない」
「ならいーけど」
もう鞠のことを離してやる気持ちはない。
それを考えたら、仲良くしてくれているに越したことはねーけど。お嫁さんというその言葉どおり、将来的にも、な。
「ねえ恭」
ひらひら手招きされて、母さんの元まで歩み寄る。
そうすれば耳元に口を寄せて、「離しちゃダメよ」と念を押された。
……言われなくても。
そんなこと、鞠が隣に戻ってきた時から覚悟してる。