【完】STRAY CAT



「……で、あの性格だから。

人数合わせで呼ばれてるけど、合コンがどんなものなのか気になるから行きたいって言って聞かねーし、」



本当に悪気が全くないことはわかってる。

何にでも興味を持つタイプだから、どんなものなのか知りたいという鞠の探究心は受け入れてやりたい。……でも合コンだぞ、合コン。



「鞠も鞠で折れねーから、結局ずっと平行線」



「……自分が襲われかけたことも忘れてそうだな」



黒田さんも、どうやら今回は俺の味方らしい。

はあ、とため息をついて、店員の呼び出しボタンを押す。……そういや、鞠のことを助けに行ってくれたのはこの人だったな。



「さすがに怒った方がいいんじゃねえか。

……いくらお嬢様だろうと、別れ話を持ち出すぐらいのことされたら、素直に諦めるだろ」



俺の彼女。ましてや婚約者。

顔が出ていないから鞠が婚約している事実は知られていないかもしれないが、橘花とフルールが提携することは大きなニュースになってる。




橘花の名前を聞いて、ピンとくるヤツもいると思う。

……だからこそ嘘がすぐにバレそうなところも含めて、心配だから行かせたくないんだよ。



あの顔だから、男はすぐ寄り付くし。

何かされたとしても、俺は絶対助けてやれない。助けてやりたくても、鞠にその危機感がねーなら、何度助けようとしたところで指先からすり抜けていく。



「……別れ話は冗談でもしたくねーし。

逆に婚約話が進んでから合コン行ってくるなんて言い出されても困るから、それなら今のうち行かせてやった方がいいんじゃねーか、とか、」



「その気がなくとも出会い求めたらそれは浮気だろ」



注文を聞きに来た店員に、俺の分のジンジャーエールと、追加の酒と、その他もろもろ晩飯になりそうなメニューを追加注文。

みちるさんは「年頃だなぁ」なんて笑ってるけど。



「浮気に年頃も何もねえだろ。

今回しっかり言っとかねえと、今後もズルズルわがまま言われて通すハメになるぞ」



やけに親身になってアドバイスをくれる黒田さん。

どういう意図なのかとその表情を見ていたら、「この人前のカノジョに浮気されたんだよ」と、横からみちるさんが教えてくれた。



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