【完】STRAY CAT



ナイフが当たらなくてよかったなあ、と。

呟くその呑気な様子は、仮にも武器を使って喧嘩を仕掛けてくるチームのトップには見えない。



「……先ほどと誓約の内容を変える。

以後我らは、藍華の傘下に入ることを誓おう」



もう武器も使用しないし、余計なこともしない。

そう言い切った表情が清々しいから、何か吹っ切れたんだろう。今後は鞠にも関わらないと言い切った。



「……今度こそ、それでいいんだな」



「ああ、構わない。

変わらずここにいたいヤツもいるだろうし、」



確認の後、紙に署名してその誓約が結ばれる。

それを預かったなずなは、「じゃあそういうことで」といち早く部屋を出ていった。



……終わったから興味なくしてるな。

アイツが現場に来てくれたおかげで、俺は特に怪我もなく帰れるわけだが。とりあえず、俺も帰って鞠に連絡しなきゃいけねーし。




「彼女と末永くお幸せに」



「言われなくても幸せにしてやるよ」



ひらひら手を振って見送られ、幹部室を出る。

工場の入口まで戻れば、なずなが怪我の確認をしながら手当をしているのを確認して、俺もそれに参加した。



「……これでしばらくは安泰そうだね」



「ああ。つーか、サンキュ。

お前のおかげで、鞠に怒られなくて済む」



「仮にあのナイフ刺されてたら、

鞠ちゃんしばらく口きいてくれなさそうだよね」



俺ら全員と、と。

消毒液をバシャバシャ掛けながら言うなずなのそれに容易く想像がついて、思わず「だろうな」と笑った。──21時40分、終戦。



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