【完】STRAY CAT
◇
朝からぱたぱたと駆け回るわたしを見て、なんだか心配そうな顔をしているお父さん。
それから、もぐもぐと朝ごはんのコーンフレークを食べている蒔。
「お父さん、なんか変じゃない……?」
「大丈夫、今日もとても可愛いよ。
……しかし鞠。今日は何時に帰ってくるんだ?」
「んー、週末だから恭の家に泊まると思う」
「今週も?
最近いくらなんでも外泊が多い気がするが、」
「じゃあ、そろそろいってきます」
お父さんの小言をスルーして、ソファに置いてあったバッグを肩にかける。
そのタイミングでインターフォンが鳴ったから、恭に「すぐ行くね」と告げて、家を出た。
マンションのエレベーターをおりる時間ですら、なんだかドキドキする。
エントランスを出て待ってくれていた恭に駆け寄ると、なんだかとても心臓がギューッとなった。
「おはよう、恭」
「ん、はよ」
決着をつけてくると言われた日から、数日。
怪我も特になかったからと、週末いきなりデートしてくれることになった。会うのは送ってくれた時以来で、本当に怪我のない様子を見て安心する。
「恭?」
巻いた髪を崩さないように、撫でてくれる恭。
その表情が優しくて、でもじっと見つめられるのは気恥ずかしくて、誤魔化すように名前を呼ぶ。
それでも彼の反応がないから、首を傾げれば。