【完】STRAY CAT
キスのあとに、恭が思い出したように口を開いた。
顔も知らない相手に謝られたのははじめてでびっくりしたけれど、きっと根が悪い人じゃないのかな、とは思う。……わからないけど。
「言われなくても幸せにしてやるよ、って返したら。
他のヤツらがしっかり聞いてたせいで、散々暖となずなとチカに揶揄われたんだよな」
「ふふ……そんなこと言ったの?」
「まあ、幸せにするつもりしかねーしな」
恭の腕がわたしを軽く持ち上げて、彼の膝の上に向かい合って座るような形になる。
おかげで映画の画面なんて見えないけれど、そんなことは全く気にならなかった。
「……じゃあ、幸せにしてね」
首裏に腕を回して、ぎゅっと抱きつく。
キスを繰り返すうちに深くなって、蕩けそうになる。力が抜けて、ゆっくりとソファに身体が沈んだ。
「外デート、向いてねーよな」
「……そうなの?」
「迂闊にお前に触れられねーだろ。
お前とどこにいても楽しいのは当たり前だけど、はやく帰りてーな、とも思う」
「っ、」
水族館にいる間も、触れたいと思ってくれていたんだろうか。
もちろんそれが全てじゃないことはわかっているけど、わたしも恭に触れられることにすごく幸せを感じる。
「わたしも……触れて欲しいなって、思ったから。
だから、買い物行かないで、家帰ろうって言ったの」
「はっ……可愛すぎること言うんじゃねーよ」