【完】STRAY CAT
第2章 ラブ・エモーション
◇
付き合ってから、恭はさらに優しくなった。
「彼氏だから」って理由をつくってお弁当を渡せるようになったし、夜の仕事に行ってるシングルマザーのお母さんが蒔の面倒を見てくれてたから、休日にデートもした。
学校でも堂々と一緒にいられるようになったし、教師からはやっぱり口うるさく注意されたけど。
お母さんは困ったように笑っただけで、「好きなようにしなさい」って言って、それ以上わたしを責めたりしなかった。
ひらひら靡くピンク色の髪。
ご近所さんでも荒れてるんじゃないかってきっと有名だったと思うけど、恭がそばにいてくれていたから、何も気にならなかった。
それに蒔は「きれい」って言ってくれたの。
ただそれだけでよかった。
「恭、今日うち来ない?
あ、待って、ややこしい。はじめの"きょう"は名前で、2番目の"きょう"は日付ね」
「……お前俺のこと馬鹿にしてるだろ」
「えへ、バレた?
……って待って冗談だから!わかってるだろうけどちょっとふざけただけなのごめんなさいっ」
あわてて謝れば恭は優しい顔をして、「ばーか」ってわたしの頭を撫でる。
それにきゅんと来てしまうんだから、ほんとに馬鹿なんじゃないかって思う。ベタ惚れだ。
「ねえ恭、進路どうするの?」
「あー? あー……どうだろうな」
付き合って1年とすこしが過ぎ、中3になると。
まわりは進路の話を頻繁にするようになった。かくいうわたしも、進路を気にしてるんだけど。
サボりつつ授業には出ている方だから、成績は悪くない。もともと委員を任されたのだって、成績が良かったからで。
この間のテストだって、ちゃんと学年トップだった。
「とりあえず進学っつーのは、
藍華のヤツらとも話してたけど……」
くあっと欠伸して、ソファに身を沈める恭。
彼が我が家に入り浸ることも増えた。基本的には平日の放課後。