【完】STRAY CAT
このあたりの小学生は、毎朝集団登校で学校に行く。
マンションの住民の中に小学生はほとんどいないから、蒔はこうやって近くの町内に混ぜてもらう形になっていた。
「おはよ! 蒔!」
「蒔ちゃんおはよー」
ぱたぱたと駆け寄ってくる、同学年の子たち。
ふっと小さく笑みをこぼして蒔とつないだ手を離すと、彼女の頭に手を乗せた。
「いってらっしゃい。
……夏休み、3人でいっしょにプール行こうね」
「……! うんっ!」
うれしそうに笑った蒔は、「いってきます!」と元気よく言って、ともだちと輪の中に走っていく。
それを微笑ましいなと思いながら見送り、今度はハセとふたりで高校へ向かって歩き出した。
空の青さに目を細め、まぶしさに瞬きを繰り返す。
……ああ、暑い。学校まで徒歩15分だけど、この調子じゃ到着する頃には間違いなく汗だくになる。
「なあ。さっきのって、ヤキモチ?」
「……なにが?」
「俺が逆ナンされそうって話」
……馬鹿じゃないの。
どこをどう聞いたら、それがヤキモチなのか。
「ふざけた発言するのやめてくれる?」
気温に拍車をかけるような湿っぽい発言にイラついて、チッと露骨に舌打ちする。
ハセはそんなわたしを見てため息をついてから、「お前さ」と落ち着いて声を落とした。