【完】STRAY CAT
「あれー。
昨日は機嫌悪かったのに今日はラブラブじゃんー」
おはよーと。
いつものように学校に到着して果歩に声をかけたら、つながった手を見てニヤニヤされた。……ラブラブって。
「そんなんじゃないから」
ぱっと手を離せば、「照れなくても良いのにぃ」と揶揄ってくる彼女。
どこが照れてるように見えるんだ。照れてない。
「ちょっと昨日話し合っただけだよ。な?」
「……そうね」
わたしの頭にぽんと一度彼が手を置いて自分の席に向かうだけで、まわりは色めき立つ。
そんなにかっこいいことをしているわけでもないのに。
「ほんとなんで橘花さんなわけー?」
「ねー。橘花さんって愛想悪いしさぁ」
……ぜんぶ聞こえてるんですけど。
「鞠」
もちろんそれはハセにも聞こえていて、それをわかっていながらわたしを呼ぶハセ。
昨日まで「橘花」呼びだったハセがいきなり呼び方を変えたから、教室の中がざわざわする。
「……なに?」
「いや、なんでもねえよ」