【完】STRAY CAT
ならなんで呼んだの……とは、言わない。
わたしに向けられた悪意のある言葉を制限するようにそう言ってくれたってことは、わたしにもちゃんとわかっていたからだ。
「あとで週末の行き先、決めような」
「え?」
「デート。するんだろ?」
デート……? そんな約束……って、ああ。
蒔とプールに行く約束をしたけど水着なんて持ってないから、週末一緒に買い物行こうって、昨日帰り道に言ったんだった。
「わかった」
どこのショッピングモールがいいかな、なんて。
電車で行けるショッピングモールを脳内でいくつかピックアップしていたら、ハセは不敵に笑う。
「じゃあ俺はどんなのがいいか、
適当にネットで検索でもかけて考えとくから」
「え……? は? はあ!?
なんでハセの趣味で選ばなきゃいけないの!?」
ばたばたと彼に詰め寄れば、「だから一緒に行くんじゃねえの?」なんて吐かすハセの脛を蹴った。
痛がってるけど知らない。ざまあみろ。
「ロクなの選ばないでしょ」
「おま、だからって脛蹴るか普通……」
「反省しなさい」
言い捨ててその場を逃げようとしたら、がっと掴まれた肩。
反射的に振り返れば首筋にハセが顔を寄せたから、まわりの女の子たちが「きゃー!」と悲鳴に近い声を上げる。なになになになに。何してんの。