【完】STRAY CAT
ちょっとした気分転換。
深い意味はなくて、ただ、蒔が笑顔になればいいなと思っただけ。
なに食べたい?と顔を覗き込めば、蒔は「んー」と考え込む。
ただの夕飯のメニューなのに真剣に考え込むから、子どもの悩みって可愛いんだなと思った。
「ハンバーグがいい!」
「ハンバーグ? じゃあファミレスにしようか」
ぎゅっと手を繋いで、ファミレスを目指す。
家からそう遠くない位置にファミレスがあるって便利だ。
外食するのがめずらしいからか、蒔の表情がずっとうれしそうで、それを見てるわたしまで頬がゆるむ。
これは……もうちょっと外食させてあげてもいいかな、なんて。
そんなことを薄ら考えながら10分とかからずたどり着いたファミレスに入ると、エアコンがほどよく利いていて涼しい。
通された席について、蒔に「好きなの頼んでいいよ」と微笑む。
「まき、これがいいー」
「ん、じゃあそれね。
ぜんぶ完食できたら、デザート頼んでいいよ」
「やったぁ」
よしよしと、蒔の頭を撫でて。
店員さんに注文を済ませると、彼女は「トイレいってくるー」と席を立った。
「うん。ひとりで行ける?」
「だいじょうぶだよー」
にこにこ。
笑って言う蒔が離れていくのを見ながら、子ども扱いが抜けないなと苦笑する。……もう小学生になって、蒔も随分としっかりしているのに。