【完】STRAY CAT
「こんなに堂々と俺に嫌いって言えるの、
たぶんお前ぐらいだと思うんだけど」
「それはお褒めいただき光栄です」
「褒めてねえよポジティブかよ。
……お前、いままで好きになった男とかいねえの?」
鮮やかなピンクに、眩しいほどのゴールド。
ダークフローラルな香水の匂い。
「……好かれるのが迷惑なのに、
わたしが誰かのこと好きになったりすると思う?」
「……ふぅん」
封印した思い出だ。思い出とも言えないほど奥にしまい込んで、それがセピアに褪せるのを待ってる。
過去をセピアにする方法は、時間が過ぎるのを待つしかないから。
「……、
いるって言われたら、それこそ嫉妬するっての」
「なんか言った?」
「聞こえねえように言ったんだよ」
夏は嫌い。気温が思考をまともに働かせてくれない。
熱に浮かされたような一時の感情で、どうにかなるのは勘弁だ。
「てかプール行くんだろ?
どうせならビキニとか着てくれねえの?」
「殺されたい?」
ほんと。
……ハセに好かれたのは、誤算だった。