【完】STRAY CAT
「……大事にしなよ? あの子のこと」
「だからうるせーって」
「あんなに恭のこと好きだって思ってくれてるんだからな。
……西澤、美人だし相当モテるから。捕まえとかねーと、ほかのヤツに奪われんぞ」
「……余計なお世話だっての」
あいつは、そんなことしない。
そんなにあっさり男を変えるような、そんな女じゃ……と。そこまで考えて、ハッとする。
「恭?」
無意識に、あいつのことを信頼してる自分がいる。
……夏休みなんて、さっさと終わればいい。
ひとりでいるのが当たり前だったのに。
あいつの来ない1日は、いまの俺には長すぎる。
「花蔵恭……!」
バンッ!と大きな音を立てて開く屋上の扉。
見えないようにこっそり口角を上げて。
「毎回毎回うるせえんだよ、お前……」
「だってうるさくしなきゃ起きないでしょ?」
「寝てんだよ邪魔すんじゃねーよ」
寝てもいないのにそう文句をこぼしつつ、身体を起こす。
校則違反のスマホを持ち込んだところで、1日を潰すのは、あまりにも長すぎるから。……だからほんの数十分の刺激があったっていいなんて、そんな。