【完】STRAY CAT



「じゃあ邪魔しないからここにいるわね」



「なんでだよ戻れよ」



「だって邪魔するなって」



「お前がここにいることがもうウザい」



「お前ってだれ?

名前言ってくんなきゃわかんない」



「……、……チッ」



そんなこと、絶対言ってやんねーけど。




人間には、不思議な心理というものが働く。

例えばそう、以前まではまったく関係のなかった相手と関わりを持った途端、なぜか事あるごとにばったり遭遇する、ということがあったり。



早い話、西澤鞠は中学で有名だった。

貼り出される試験の成績は常に首席。まさに優等生を絵に描いたような彼女の名前を、校内でいくつも見かけることが増えた。



本人は「大したことない」って笑っていたものの。

その裏で努力していることは、薄ら気づいていた。



基本的に好き嫌いはしないものの、カボチャは食感が苦手で好きじゃない。でも妹である蒔に「好き嫌いしない」と言えるように、多少無理をして食べている。

犬と猫なら断然猫派で、好きな色は白。



淡々とインプットされていく情報。

アウトプットされていないのは、俺の感情だけ。



「昨日ね、先生に『花蔵どうだ?』って聞かれたの。

話すようになったけど、授業に出る気配はないです~って言ったら、困った顔してたよ」



「だろーな」



< 76 / 351 >

この作品をシェア

pagetop