【完】STRAY CAT
「じゃあ邪魔しないからここにいるわね」
「なんでだよ戻れよ」
「だって邪魔するなって」
「お前がここにいることがもうウザい」
「お前ってだれ?
名前言ってくんなきゃわかんない」
「……、……チッ」
そんなこと、絶対言ってやんねーけど。
人間には、不思議な心理というものが働く。
例えばそう、以前まではまったく関係のなかった相手と関わりを持った途端、なぜか事あるごとにばったり遭遇する、ということがあったり。
早い話、西澤鞠は中学で有名だった。
貼り出される試験の成績は常に首席。まさに優等生を絵に描いたような彼女の名前を、校内でいくつも見かけることが増えた。
本人は「大したことない」って笑っていたものの。
その裏で努力していることは、薄ら気づいていた。
基本的に好き嫌いはしないものの、カボチャは食感が苦手で好きじゃない。でも妹である蒔に「好き嫌いしない」と言えるように、多少無理をして食べている。
犬と猫なら断然猫派で、好きな色は白。
淡々とインプットされていく情報。
アウトプットされていないのは、俺の感情だけ。
「昨日ね、先生に『花蔵どうだ?』って聞かれたの。
話すようになったけど、授業に出る気配はないです~って言ったら、困った顔してたよ」
「だろーな」