【完】STRAY CAT
軽くあしらえば「んなことねえだろ~?」とウザ絡みしてくる。めんどくせーなおい。
ため息をついてテキトーにあしらおうとしていたら、三柴 なずなは「恭」と俺を呼ぶ。
「なんだよ」
「そこ、どしたの?」
「………」
指摘されて視線を落とす。
俺のシャツに、不自然にできたシワ。……せっかくうしろから抱きしめてやったのに、鞠が胸元に顔をうずめてきて。
ぎゅっと握ってたから、できたらしい。
気温が気温だから涙は乾いていたものの、シワだけはどうしようもなかった。
探られてもめんどくせーから、「知らねー」で誤魔化す。
なずながまた何か言いかけたところで、今度俺を呼んだのはあすみだった。……なんだよ、次から次へと。
「お前、家に上がったのか?」
「は? さっきそう言っただろ。
つーかお前、そういうの気にするタイプかよ」
「……いや。別にいい。
ああ、それと。お前、顔にすぐ出るな」
「……何の話だよ」
ペットボトルのキャップを開けながら、ソファに座る。
プシュッと炭酸独特の開封音が、一度不自然に静まった部屋の中に響いた。
「イライラしてただろ。俺があいつに話しかけてる間」
露骨すぎる、と。
あすみの発言を流すように、炭酸に口をつけた。