【完】STRAY CAT
「糸井、コイツに言うだけ無駄だから。
散々口説いてんのに全然ふり向かねえし」
「ならもう諦めちゃえばいいのにぃ」
「わたしも何回も言ってるわよ」
机の横にバッグをかけて、ポケットの中のスマホを探る。
必要最低限の連絡先しか登録されていないスマホ。あっても無くても特に変わんないようなそれ。
「……ほんとにさぁ、ハセくんなんで鞠がいいのぉ?」
「……好きだから以外になんか理由ある?」
殴ってやりたい。
好きとかそんな感情、本当にどうでもいい。ハセからそういう目で見られてるっていう現状がたまらなく気持ち悪い。男とか女とか、そんなの。
「ほんと嫌なんだけど」
突き刺さる女の子たちからの視線。
たしかにかっこいい見た目なのは認めるけど、そこまでして彼氏彼女っていう関係になりたい理由がわからない。ハセに魅力なんて感じない。
だって結局同じだから。
……信じた関係が永遠に続くなら、わたしは最初からあの手を離したりはしていない。
期待なんて。
もう、抱くだけ無駄なんだと知った。
「橘花。
今日終わるの早ぇし、どこか寄って帰らねえ?」
気がつけば朝はいつも一緒に登校することになっていたけれど、ハセとは下校も一緒。
放課後、当たり前のように寄ってきたハセにそう声をかけられて、ぱっと時計を見やった。
いまの時刻は15時過ぎ。
本当ならまっすぐ帰って夕飯の買い出しに行きたいところだけど、「何かあるの?」と一応尋ねる。