【完】STRAY CAT
ぼんやりしている思考を取り戻すように、ハセの声で顔を上げる。
彼の言う通り1階のど真ん中で、展開されている水着コーナー。大半が水着だけど端には浴衣もあって、申し訳堤度にビーチグッズも置かれていた。
「そういや、蒔の水着はどうすんの?」
「新調するわよ。
去年の水着を着させてみたら、大きくなってて入らなかったんだもの」
ほんとうは、蒔と一緒に選べたらよかったんだけど。
いくらお利口とはいえ幼い子と一緒にショッピングモールで歩くのは気を遣うし、わたしがまだ18歳になっていないから、車の免許もない。
荷物をたくさん持って蒔の面倒を見るのは大変だから、今回連れてくるのは断念した。
きっと"あの人"に連絡したら、すぐに迎えに来てくれるけど。
「じゃあ、お前と蒔の分な」
必要最低限以外には、頼りたくなんてない。
……陳腐なプライドだと言われてしまえばそれまでだけど、それでも嫌だった。
「ハセは買わないの?」
「俺は持ってるからいい。
どっちからにする? お前決めたの?」
「全然。
蒔はピンクがいいって言ってたから、先に蒔の分から選ぶわ」
わたしは別にこだわりもない。
強いて言うなら水着も着たくはないんだけど、蒔と約束してしまった以上は仕方ない。
子ども用水着のコーナーに足を踏み入れて、蒔の好みを考えながら、いくつかピックアップする。
……どれを着ても似合いそう。姉の贔屓目がなくたって、蒔はかわいいんだから。
「蒔が着るなら……、って、なに?」
ハンガーをいくつか手にもって水着を選ぶわたしに、ハセが視線を向けてくる。
でも、なんていうか、その。