【完】STRAY CAT
「いやらしい目で見るのやめてもらっていい?」
「ばっ、おま……!
そんな目で見てねえし、よりによってこんなとこでデカい声出すなよ!」
「あらごめんね?
水着好きの性癖持った男子高校生だと思われたら」
「お前なあ……」
だってハセがわたしのことそういう目で見てくるから。
……あれ? 見てないって言ってたっけ?
「俺はただ……
お前は蒔のこと考えてるときだけ、すげえしあわせそうに笑うなって見てただけで」
ため息をつきながら、ハセはわたしをじっと見下ろす。
どこか憂いを帯びたその声が、妙に頭の中に残った。
「……当たり前でしょ」
「………」
当たり前。
だって蒔は、わたしの、唯一の生きがいだから。
「蒔がいなかったら、
わたしはそもそもハセとも出会ってない」
自分の命を投げ出そうと思ったわけじゃない。
ただ、頼るくらいなら泥水を飲んででも意地で生きていこうと思っていただけだ。
蒔がいたから、頼るしかなかった。
いくら頼りたくない相手だったとしても、蒔をしあわせなまま育てるためには、どうしたって助けてもらわなきゃいけなかった。
わたしがもっと大人だったら、よかったのに。
そしたら、意地張って、蒔を自分の手で最後まで育ててみせたのに。