【完】STRAY CAT
いま思えば、態度の悪さは十分互角だ。
「『俺は藤二に用があるんだよ』って言ったら、」
「『え、わたしもなんだけど』ってびっくりして思わず言っちゃったのよね。
……そのあとふたりですっごく笑ったの覚えてる」
ストーカーされてるのかなって勘違いしたのに、まさかの同じ高校に向かう予定で。
話をしたら同い年だって言うから、そこではじめて同じマンションに、同じ学校の生徒がいることを知った。
「……そんときに、惚れた」
「はい?」
「遠慮なしに、俺のことストーカー扱いしてきて。
でもそのあとに、ふたりで笑ったじゃん。……そんとき見たお前の笑顔が楽しそうで、すげーいいなって思った」
ハセの瞳が、まっすぐにわたしを見る。
放たれた言葉があまりにも素直だったから、顔が熱くなっていくのを感じた。
「この子と一緒ならたぶん毎日楽しいって」
「、」
「そのあと、蒔とも出会って。
……蒔のためなら頑張るお前のこと、本気で好きになった」
熱い。……いや、違う。
わたしに向けられる視線も言葉も、態度のひとつでさえ、すべて。
「保留の、返事。
……まだ数日しか経ってねえけど、ごめん、聞きたい」
そう、だ。甘い。息が詰まるほどに、甘い。
いっそ指先から溶け落ちてしまいそうなほど。