【完】STRAY CAT



愛だの欲だの、そういうのが気持ち悪いって思うくせに。

結局わたしが望むのはそれで、その感情を強く思い知るたびに、わたしも女だったことに気づく。



「それにハセなら、蒔も懐いてくれてるし」



結婚するなら、あの子が成長するまでは一緒。

蒔のことも幸せにしてくれるかどうかは、金や地位なんかじゃわからないから。



「……保留にしたのは、

ハセでもいいのか確認の連絡をするため」



実際によく知ってるハセの方が、絶対的に信頼できる。

それだけは、ハセに対して日頃散々な言い方をするわたしでも、間違いなく言い切れることだった。



「だから、その、……っ」



言いかけた言葉を遮るように、腕を引かれる。

ハセに包み込まれていることに気づいたときには、カッと熱くなる身体。




「ちょっ、人いるから、」



押しのけようとしても、その腕の力は強くなるばかりで。

抵抗をおさえるように、わたしの頭を胸に引き寄せたハセ。そうやって顔を隠すことで、わたしにこれを我慢しろと言っているらしい。冗談じゃない。



「こないだ、学校帰りに……

お前喧嘩に気づいて、ひとりで突っ走ったじゃん」



それでも抵抗しようともがいていたら、頭のすぐそばで聞こえる声。

抱きしめられているせいか声の振動まで感じ取れそうな囁きに、頭の中がぐらぐらした。



「あんとき、お前の言った『恭』っていうのが元カレだって、すぐわかった。

実際そのあと、あの男に元カノどうこう言われてたしな」



付き合おうの一言すら言わなかったくせに、言ったかと思えば今度は強引に抱きしめてきて。

……調子に乗るのもいい加減にしてほしい。



「だから、焦ってる。

お前が元カレの周囲の人間に影響されて、またそっちにもどんじゃねえかなって」



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