【完】STRAY CAT







「お前さあ……」



「な、に……?」



閉鎖的な空間。密にこもる熱。反響する水音とわたしの声。

水着を選んで帰宅するまでにかかった時間を考えると、蒔が帰宅するまではあと1時間ほどしかない。



はじめて自分たちのテリトリーに入れたのに、ハセとこんなことしてるなんて、もう意味がわからない。

……いや、誘ったの、わたしだけど。



「出会った時には、

もう前の彼氏と別れてたんじゃねえの?」



シャツを脱いで、覆い被さってくるハセ。

気持ち悪いと言っていた割に、受け入れるのは微塵も怖くなかった。



ずっとハセは余裕ぶった態度で、わたしのことを待っていてくれた。

だけどわたしからの誘いにあっさり乗るんだから、ハセもただの男の人なんだと思う。




「……そ、だけど?」



「じゃあ……中学ん時、か」



途切れ途切れに会話はするけれど、何を言われているのか深く理解するまでには及ばない。

それくらい、今のわたしに余裕なんてなかった。



曖昧な熱が慣れなくて、おかしくなりそう。

っていうか、まずい……恭と別れて誰ともこういうことしてないから、手、震えてる。



「腕、背中に回して」



言われた通りに腕を回したら、必然的に密着する身体。

肌が吸い付くようにぴったり重なって、ハセに喰らいつくようなキスをされる。



(すさ)む吐息に、妖しく軋むベッドのスプリング。

気づけば手の震えは止まっていた。……いや、そんなことを考えられないくらいに、頭の中は真っ白で。



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