【完】STRAY CAT
◇
「お前さあ……」
「な、に……?」
閉鎖的な空間。密にこもる熱。反響する水音とわたしの声。
水着を選んで帰宅するまでにかかった時間を考えると、蒔が帰宅するまではあと1時間ほどしかない。
はじめて自分たちのテリトリーに入れたのに、ハセとこんなことしてるなんて、もう意味がわからない。
……いや、誘ったの、わたしだけど。
「出会った時には、
もう前の彼氏と別れてたんじゃねえの?」
シャツを脱いで、覆い被さってくるハセ。
気持ち悪いと言っていた割に、受け入れるのは微塵も怖くなかった。
ずっとハセは余裕ぶった態度で、わたしのことを待っていてくれた。
だけどわたしからの誘いにあっさり乗るんだから、ハセもただの男の人なんだと思う。
「……そ、だけど?」
「じゃあ……中学ん時、か」
途切れ途切れに会話はするけれど、何を言われているのか深く理解するまでには及ばない。
それくらい、今のわたしに余裕なんてなかった。
曖昧な熱が慣れなくて、おかしくなりそう。
っていうか、まずい……恭と別れて誰ともこういうことしてないから、手、震えてる。
「腕、背中に回して」
言われた通りに腕を回したら、必然的に密着する身体。
肌が吸い付くようにぴったり重なって、ハセに喰らいつくようなキスをされる。
荒む吐息に、妖しく軋むベッドのスプリング。
気づけば手の震えは止まっていた。……いや、そんなことを考えられないくらいに、頭の中は真っ白で。