君と向日葵
記録はしっかり書きましょう
「書けない~」
実習初日の午後11時半。梓は自室の机に向かって突っ伏していた。実習につきものの記録というやつに苦しんでいるのだ。
実習日誌は基本毎日書かなくてはならない物で、内容は当日の実習内容を時系列で記録する部分と、その日の目標についての気づきや考察の部分がある。
実際に行動したことなら普通に書けるのだが、それについての考察となるとどう書いていいのか全く思いつかない。記録用紙を前に途方に暮れているとLINEの着信音が鳴った。
(薫さんだ!)
思いもよらない薫からのLINEだった。
“こんばんは、日誌書けてる?”
なんとタイムリーなのだろう。まさかニュー〇イプ?地獄に仏とはこのことだ。
“考察の部分が全くダメです。現実逃避して何か本でも読みそうになってました”
少し間が開いた。
“例えば今日コミュニケーション取った中で一番難しかった人について、何故コミュニケーションがとりがたかったのかとか、今後はどうすればいいと思うか、とかを考えて文章にしてみたら?難しかったら最初は箇条書きでもいいと思うよ”
“ありがとうございます。やってみます!”
猫が飛び跳ねるスタンプをつけた。
それから1時間ほどで、梓は何とか日誌を書き終えた。初日からこれでは先が思いやられるが、薫が自分のことを気にかけてくれていることがわかって、思わず顔がにやけてしまう。
(毎日日誌のことにかこつけてLINEのやり取りができるのでは?)
そんなさもしい考えまで浮かんできたが、とりあえず今日のノルマは達成した。薫に感謝しながら梓は眠りについた。