ブルーDAY'S〜泣き笑いの日々〜
 しかし私も彼も、それどころではなかった。
 「私、今彼氏の家にいるんだけど・・・・M史も隣にいるよ。それ、私じゃないって。」

 足元に冷たいものを感じながら、私は言った。
「えっうそ!違うの?なぁんだ。  ね、さっきのニコじゃなかったよ。今、M史君の家だってさ。」彼女がそういうと、電話の向こうから友人の彼氏が、「マジかよ、そっくりさんか。」と言うのが聞こえた。

 「そんなに似てた?」 私が聞くと、そりゃもう激似だよ、と友人はなぜかケラケラと笑った。それから「エクステしてたし、服もなんかあんたっぽかった。」と付け足した。
 
 私っぽい服がどんなんかは知らないが、怖すぎる。
 下北沢、渋谷はともかく、所沢は実家から電車で10分そこそこの場所である。近すぎる、激似の私。
 友人に事の顛末を話そうか迷っていると、
「あ、地下入っちゃうからまた連絡するねぇ。ほんじゃ。」
と言って、プッと切られてしまった。ツーツー・・・と虚しい回線の音を聞きながら、
「何これ、ドッペルゲンガー?」
 と二人で顔を見合わせた。

 すると黙っていた彼が突然、不信そうに私をじっと見て、「お前、本当にニコか?」
ととんでもない疑いをかけてきた。 えぇ・・・。
 「なんかいつもより、肌荒れしてる気がする。」と彼。
 「整理前なんだよ。仕方ないでしょ。」と私。
 「なんか声がニコと違う。」
 「昨日のタバコと酒やけだよ、お前もカラカラじゃん。」
 「じゃぁ、俺の実家の住所は?」
 「いや、それ知らないから。」
 
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