COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
”だって魚、食べるでしょ?おいしそうって思うのが普通なのに。”
『イワシ…うまいしな。そう思うのが普通だ』
その言葉に
私の中で、何かがガタンと音を立てて均衡を崩した。
有松さんのこと、もっと知りたい。
こうして隣に並んで色々なものを見て、話したい。
その名前を知っているような、知らないような。
そんな気持ちが心の奥底からどんどん湧いてくる。
「ですよね。
おいしそうですよね!」
彼の横顔に投げかけると、こちらを見る。
『だろ』
仏頂面だとずっと思ってきたのは、きっと私の勘違いだ。
でも、まさかイワシの前でこんなことに気付いちゃうなんて。
私らしいといえばそうなんだろうけど。
『イルカショーの時間、確認しておかないとな』
そう言って彼はパンフレットを開いた。
昭香先輩と交わしたメッセージが思い浮かぶ。
「…やっぱり見ますよね!」
でも。
まるで面接の時のように背筋を伸ばして
イルカショーを見る有松さんを想像する。
やっぱりその絵面は絶妙に面白くて、私は少し笑った。
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