COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『わ!すみません!
ぶつかってない!?』
私を心配するように右肘に彼の大きな手が触れた。
「大丈夫」
そう答えると、咄嗟に出てしまったその手を引っ込めて彼は更に焦る。
『ってああ!すみません!』
どうやら百面相は健在のようだ。
「ねぇ春田くん、バター」
鍋を指差すと、彼は何かを思い出したように鍋に向き直る。
『ああ!!!バター!!!!!!』
そう叫ぶと、急いで木べらを手にすると鍋に向かった。
賑やかなスタートになったが、
何とかバターに薄力粉を混ぜる工程を終えることができた。
その先の工程もスムーズに進み、
鍋底にこげつかないように混ぜるその手さばきも見事なもので、さすが料理人だなぁと感心した。