COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
『最後です!
塩、コショウ、ナツメグで味を調えて完成です』
手慣れた手つきで、それらを投入する。
『今日作ったコレ、来週まではもつのでタッパーに詰めておきますね!』
そう言うと、彼はキッチンの中に用意されたスツールに腰をかけるとニコっと笑った。
彼の笑顔をじっと見つめる。
実は、ずっと聞いてみたかったことがある。
「…春田くんは、どうして料理人になったの?」
彼は少しの間、考える素振りをして答えた。
『んー…昔から料理の道には進みたかったんだけど、なかなか両親の賛同が得られなくて。
両親は一流企業に就職しろって。
それで衝突して大学辞めて、日本料理の店で修行して免許を取ったんですよ』
その経緯は、いつも温厚でマイペースに見える彼からは全く想像できなかった。
「意外と反骨精神、もってるんだね」
『大学辞めることはなかったかなぁ、と今なら思うんですけどね』
彼は困ったような笑顔で
未だに反対されてます、と付け加えた。