COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
もう私はあの頃の私じゃない。
心の中で彼の笑顔を思い出すたび、そう思えた。
クローゼットの中に意識を戻す。
よくよく見ていると、どれもアイボリーや薄いベージュの服ばかり。
綺麗にハンガーにかけられて並ぶそれは
前の彼との思い出が染みついているような気がした。
「新しい服でも買おっかな…明日買いに行こ」
そう呟いてクローゼットを閉じた。
急遽舞い込んだ明日のスケジュール。
誰と出かけるわけでもないのに、妙に浮足立っている自分を姿見に映す。
もう“彼”の声は聞こえてこない。
もう聞こえてくることはないのかもしれない。
ずっと歪に見えていた自分の目が、
少しだけ逞しくなって、ちゃんと前を見据えているような
そんな風に映った。
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