COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
レジに目を向けると、
今は誰も並んでいないようだ。
手早く会計を済ませると、彼の姿を探して書店の中を歩く。
彼は世界の風習や文化といった少し難しい本が並んだ本棚の前にいた。
「伏屋室長。
こういうもの、お好きなんですね」
静かに彼のそばへ歩み寄ると声をかける。
『はい、世界は広いですからね。
まだまだ僕の知らない事が溢れているって、何だかワクワクしますね』
目先のことで精一杯の私。
なんだかとてつもなく彼を遠くに感じて、少し寂しい気持ちになる。
『じゃあ僕も買ってきますね』
私が手に下げていた書店のロゴが入った袋を一瞥すると
彼はそう言って、手にしていた本を閉じた。